2023/11/04 16:54


美術館という静かな空間が好きです。

京都は特に、個性的な個人美術館があるのでよく通います。

肝心の作品についてはというと、これは好きか嫌いかとか、横にある解説を読んでなるほど価値のあるものなのかと思うレベルで、芸術的なことはあまりよくわからないというのが正直なところです。

そんな私が、京都・何必館で出会い、思わずその前で立ちすくんでしまったのが、山口薫の作品「おぼろ月に輪舞する子供達」でした。

悲しいほど清らかだと感じたその絵は、山口薫の絶筆だそうです。
何必館館長による解説には、「画家には描いてはいけない絵というものがある」といったことが書かれていましたが、まさにそういうものというか、触れてはいけない世界のような気がしました。

山口薫詩画集『独りの時間』には、絵画だけでなく、紙片に書き散らした詩文のような言葉もたくさん収録されています。

孤独や死に対する思いを吐露する言葉も多いのですが、どこか素直で優しく、愛らしさすら感じる・・・と言ったら失礼になるでしょうか。
その言葉たちは、読む人の孤独にもそっと寄り添ってくれるような気がします。

もちろん、「おぼろ月に輪舞する子供達」も収録されています。

山口薫の作品は、部屋に飾るよりも、本を開いて眺めるほうがいい、と個人的には思います。
その絵と言葉をそっと味わったら、本を閉じて、また私の「感情生活」に戻っていく。そういうふうに関わりたい作品たちです。